『冬のソナタ』が社会現象になったのに対し『夏の香り』がそこまで流行らなかったのはなぜ?
日本での『冬のソナタ』(2002)の大流行により、一躍大スターとなったヨン様。
『冬ソナ』は、ユン・ソクホ監督の四季シリーズ第2作目です。
第3作目は『夏の香り』(2003)という作品で、主演はソン・スンホンと『愛の不時着』で日本での知名度が爆発的に上がったソン・イェジンが務めています。
『冬ソナ』は日本で社会現象となるほどの大ヒット作となりましたが、『夏の香り』はそこまで話題にはなりませんでした。
個人的には『夏の香り』は大好きな作品で、特に主演二人の息を呑むような美しさにうっとりさせられっぱなしでした(3回は観ました笑)。
この記事では、『冬ソナ』が大ブームとなったのに対し、なぜ『夏の香り』はそこまで話題にならなかったのか。
『冬ソナ』にはあって、『夏の香り』になかったものは何なのか?
そんなことを勝手に考察してみたいと思います。
主演
『冬のソナタ』
ペ・ヨンジュン(写真右)
チェ・ジウ(写真左)
『夏の香り』
ソン・スンホン(写真左)
ソン・イェジン(写真右)
比較
主人公のルックスについてちょっと考えてみます。
ソン・スンホンという人は驚くほど端正な顔立ちをしていて、顔のキレイさだけだとヨン様の上をいくのでは?というのが私見です。
ただ、ヨン様という人は声がおそろしく良いのですよね。
体格も良くて、「韓国人男性とはかくも体が出来上がっているものなのか!」と驚いた記憶があります。
ヒロインに関しては、個人的には清楚可憐なソン・イェジンに憧れます。
ジウ姫もスラッとしたスタイルに透けるような白い肌が魅力的です。
キャストについては好みの問題といえるでしょうが、より<大人の恋愛>を体現している『冬ソナ』(初恋がテーマとはいえ、放映回数の大部分が20代後半になってからの話です)の方が、日本人マダムたちには馴染みやすかったのではないかと思います。
『夏の香り』の方は、主人公の二人が少し若すぎる印象です。
年齢を調べてみました。
ペ・ヨンジュン:1972年生まれ→冬ソナ放映当時 30歳
チェ・ジウ:1975年生まれ→冬ソナ放映当時 27歳
なんと、ソン・イェジンは21歳でした!
ということは、撮影時は20歳くらいでしょうか。
やはり『夏の香り』は、マダム層には若すぎたのかもしれません。
主題歌
『冬のソナタ』
Ryuの『最初から最後まで』
流行りましたね~。
雪景色の中、じゃれあって遊ぶ高校時代のチュンサンとユジン。
『本当に忘れてしまいたい~♪ 二度と会えないのなら~♪』
と響き渡るRyuの歌声は、見る者の涙を誘いました。
『夏の香り』
シューベルトの『セレナーデ』
なんとクラシックです!
もちろん、歌詞はありません。
比較
『夏の香り』の主題歌は、ドラマの切ない内容にマッチしていて本当に素晴らしい!
しかし、歌詞がついていないことから、キャッチーさがありません。
一方、『冬ソナ』の曲は韓国語が分からなくても妙に耳に残るメロディーと歌声で、思わず口ずさんでしまいたくなる魅力に溢れています。
主題歌対決では、圧倒的に『冬ソナ』の方が大衆の心をつかんだのではないかと思います。
ちなみにうちの娘は、録画しておいたドラマを見る時、いつも主題歌などは「早送りして」というのですが、『冬ソナ』に関しては「この主題歌から見始めることでドラマの世界に入れるから、これは飛ばしたくない」と言っていました。
これに対し、『夏の香り』に関しては、「これはいいや。飛ばして」と言います。
若い子の発言ひとつ取っても、ドラマのヒットに必要な要素が何なのかが見えてきます。
あらすじのポイント(ややネタバレあり)
『冬のソナタ』
ドラマのあらすじはあまりにも有名なので、ここでは箇条書きであらすじのポイントとなる部分のみを挙げていきたいと思います。
- 初恋
- ミステリアスな少年(チュンサン時代)
- 出生の秘密
- 恋人の死
- 亡き恋人を想わせる場所(春川(チュンチョン))
- 亡き恋人と瓜二つである男性との出逢い
- 外国帰りで仕事ができ、やや見た目の派手な男(ミニョン)
- 婚約者とは幼なじみで長い付き合い(サンヒョク)
- 婚約者は同級生
- 家族ぐるみでの付き合い
- 意地悪な恋のライバル(チェリン)
- 見た目が派手で自信満々で言いたいことをハッキリ言うライバル女性
- 婚約者につく嘘(ミニョンと仕事をすることになったことを、最初ユジンはサンヒョクに隠していた)
- 四角関係
- モテないがさっぱりとしていてヒロインを理解する”オンニ(お姉さん)”の存在
- 見た目がパッとしない同僚男性
- 「走る」ヒロイン(ユジンは遅刻常習犯)
- 新たに出現した気になる男性をいっときは突っぱねようとするヒロイン
- 2人きりの夜(スキー場の山頂)
- 恋する気持ちに正直になるヒロイン
- ずっとプラトニックだったのに、女性の心変わりを知り無理やり襲おうとする元婚約者
- 交通事故
- 記憶喪失
- 記憶の回復
- 婚約破棄
- 近親相姦
- 失明
- 一旦別れる
- 再会
『夏の香り』と両者の比較
さぁ、『夏の香り』はどうでしょうか。
ポイントを挙げつつ、『冬ソナ』とかぶる箇所を赤にしてみますね。
『夏の香り』オリジナルの箇所は緑にしてみます。
- 初恋
- 恋人の死
- 亡き恋人を想わせる場所(宝城(ポソン))
- 心臓移植
- 婚約者とは幼なじみで長い付き合い
- 婚約者は、頼りがいのある”オッパ(お兄さん)”
- 家族ぐるみでの付き合い
- 外国帰りで仕事ができ、やや見た目の派手な男(ミヌ)
- 四角関係
- モテないがさっぱりとしていてヒロインを理解する”オンニ(お姉さん)”の存在
- 見た目がパッとしない同僚男性
- 見た目が派手で自信満々で言いたいことをハッキリ言うライバル女性
- 「走る」ヒロイン(心臓の弱かったヘウォンは、思い切り走ることが夢だった)
- 見た目は異なるが発する言葉が死んだ恋人と同じ女性
- 婚約者につく嘘(ヘウォンはオッパに、ミヌと実は山で一緒だったことを隠していた)
- 交通事故
- 新たに出現した気になる男性をいっときは突っぱねようとするヒロイン
- 2人きりの夜(島にて)
- 恋する気持ちに正直になるヒロイン
- ずっとプラトニックだったのに、女性の心変わりを知り無理やり襲おうとする元婚約者
- 婚約破棄
- 一旦別れる
- 再会
御覧ください!
なんと、『夏の香り』のポイントは、ほとんど『冬ソナ』とかぶっています!
『夏の香り』の独自のポイントは、①心臓移植、②婚約者は頼りがいのあるオッパ、③死んだ恋人と見た目が瓜二つなのではなく、発する言葉が同じである点だということがわかります。
3つ目を「死んだ恋人と似た人物」という観点でくくれば、『夏の香り』の特筆すべきオリジナリティーは、<心臓移植>と<婚約者は頼りがいのあるオッパ>の2点ということになります。
『冬のソナタ』では、さらに<出生の秘密>、<記憶喪失>、<記憶の回復>、<失明>そして<近親相姦>まで出てきます!
さらに、恋のライバルであるチェリンの腹黒さ加減が半端ありません!
実に盛り沢山です!
公開年度を見ても、『冬ソナ』が一年先であるため、盛りだくさんの『冬ソナ』を先に見てしまっては、『夏の香り』がこれを超えるブームを巻き起こすことは難しかったのも当然といえるでしょう。
公開年度が逆だったらどうなっていたでしょう?
気になるところです。
キャラクター設定
ヨン様演じるチュンサン/ミニョンと、ソン・スンホン演じるミヌ。
それぞれのキャラクター設定にはどのような違いがあるでしょうか。
チュンサン/ミニョン(ペ・ヨンジュン)
これは完全なる私見なのですが、私はヨン様がずっとチュンサンだったら、『冬ソナ』はここまで流行らなかったと思います。
チュンサンは大人びていてミステリアスな魅力があるとはいえ、父親が誰か分からず母親を憎んでいたという設定で、心に傷をもつ暗い人物として描かれています。
これに対し、外国帰りのミニョンは明るく、男らしいキャラクターです。
ミニョンの一番の見せ場は、心が離れていくユジンをがんじがらめに束縛しようとするサンヒョクとは対象的に、悩み苦しむユジンを側でそっと支え続けるシーンでしょう。
自分の気持ちはユジンにはっきりと告げた上で、選択はユジンに任せる。
「どんな選択をしたとしても、僕はユジンさんの味方です」
そう告げるミニョンは実に頼もしく、愛さずにはいられない人物として描かれていました。
ミヌ(ソン・スンホン)
優しいけど、ちょっと女々しい。
以上です笑
それは冗談として…相手に気を遣える優しい人物ではありますが、あまりにもゴニョゴニョ悩みすぎでした。
ミヌに激しく想いを寄せるチョンアのことを妹としてしか見れないといいつつも、ハッキリと拒否することなくズルズルと相手にし続けているのもどうかと思いました。
一番納得できなかったのは、ヘウォンと無事カップル成立した後、彼女の心臓に関する秘密を知った後のミヌの態度ですね。
正直ちょっとイラっとしました。
ユン・ソクホ監督は、美青年にクヨクヨ悩ませる画を撮りたかったのでしょうか笑
個人的に、キャラクター対決では、ヨン様演じるミニョン氏の圧勝だと思っています。
(お顔対決では、私は断然ソン・スンホン派ですが)
番外編
最後に番外編として。
『冬ソナ』のような<四文字>の言葉は、日本人にとても馴染みやすいといわれています。
食べログ、メルカリ、インスタ、逃げ恥etc.
この観点からみても、四文字に略せる『冬のソナタ』は実に強い!
『夏の香り』は「なつかお」?何だか変ですよね。
こういうちょっとしたことも、ブームを巻き起こすかどうかに地味ながら作用していると思います。
おわりに
ここまで『冬ソナ』と『夏の香り』をじっくり比較してきました。
すべて完全なる私見ですが、皆さんはどう思われたでしょうか。
韓流ブームを巻き起こしたのは確かに『冬ソナ』ですが、美しいクラシックの響きに合わせて広がる緑の茶畑、その間をゆっくりと歩いてくる二の腕ムキムキの美青年ソン・スンホンを堪能できる『夏の香り』が私は大好きです。
ちなみに、ユンソクホ監督の四季シリーズの第一作目は『秋の童話』なんですよね。
こちらも主演はソン・スンホン。
監督はスンホンさんがお気に入りだったのですね。
相手役は『太陽の末裔』のソン・ヘギョです。
そしてなんと、日本で大人気だったウォンビンも出ています!
『秋の童話』、見ましたが個人的にはちょっと…
私にはちょっとロリータものっぽく見えてしまって(汗)
ソン・ヘギョがまだムチムチしていたからかもしれません。
『春のワルツ』は残念ながら途中で挫折してしまいました。
機会があったらまたちゃんと観てみたいと思っています。
余談ですが、フランス映画にも四季シリーズがあります。
エリック・ロメールという監督の作品です。
私はこのシリーズが大大大好きで、DVDも買いました。
韓国とフランスでは、同じ四季を扱っていても、ぜんぜん違うんです。
フランスの方が、もっと生々しい(笑)
そしてよくしゃべるしゃべる。
みなさんも、もし機会があったら、フランス版の四季シリーズもぜひ観てみてください。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。