挨拶の言葉選び。こんなふうに言ってませんか?【なんか変】
人と人のコミュニケーションの基本は、挨拶です。
私は基本的に、「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」「お疲れ様です」「お先に失礼します」で、ほとんどのシチュエーションには対応できると思っています。
しかし、このような基本的な挨拶言葉であっても、相手との関係やシチュエーションによってはとんでもなくおかしな印象を与えてしまうことがあります。
そこで今日は、様々な挨拶言葉のうちから、私が実体験から特に気になっている次の2点について書いていこうと思います:
①教師と学生間の挨拶
②ビジネスメールで頻繁に用いられる「お世話になっております」の使い方
お若い方や、お仕事をなさっている方には、なんらかの参考にしていただけるのではないかと思います。
教師と学生間の挨拶
学生からの「お疲れ様です」
私は現在、大学で非常勤講師をしています。
ある日、私と同年代の男性講師が、「最近の学生たちの挨拶はおかしい」と首をひねっていました。
彼の言い分は次のようなものでした:
「帰ろうとして校舎を出た時に、学生とバッタリ会うときありますよね?
その時に、彼ら、私に向かって「お疲れ様です!」って言うんですよ。
おかしくないですか?僕は彼らの同僚じゃないのに」
なるほど、これには納得です。
実は私も、学生たちが教師に対して使う「お疲れ様です!」に違和感をいだいていたからなんです。
私自身も、授業直後に学生と廊下やお手洗いで会うと、「お疲れ様です!」と言われます。
男子学生の中には、「おつかれっす!」という子までいます(汗)
そう言われるたびに、なんか変だよなぁと感じていました。
誤用の原因
「お疲れ様です」は、一般的には、職場の同僚または親しい先輩などに対して用いる「労をねぎらう」表現です。
学生が教師の「労をねぎらう」のは、立場上おかしいですよね?
ですので、学生が教師に対し「お疲れ様です」というのは、どう考えても不適切なわけです。
では、なぜこのような用い方がなされているのか?
それはおそらく、アルバイトの影響だと思われます。
親しい後輩に、彼女のバイト先での挨拶事情を尋ねたことがあります。
すると、職場に入ったら最後、帰るまでのあいだ、誰かに会えばひたすら「お疲れ様ですッ!」と言い続けるというではないですか。
これには驚きました。
機械的に「お疲れ様です!」を吐き出し続けているというわけです。
教師に対する「お疲れ様です」の誤用は、アルバイトでの乱用が原因だと考えてほぼ間違いないでしょう。
では、「お疲れ様です」の代わりに、学生たちは教師に何と言ったらいいのでしょうか。
これはふつうに、「こんにちは」や「さようなら」でよいと思います。
ちなみに私は、何かを教えてくれた目上の人がその場を去るときには、「ありがとうございました。さようなら」と言うようにしています。
「いつもお世話になっております」の是非
皆さん、ビジネスメールの冒頭で「いつもお世話になっております」と書きますか?
多くの方は書いているのではないでしょうか。
私も、お勤めをしていた頃は必ず書いていました。
特に意味を持たない、サラリーマンの合言葉的なものだと思っていたのです。
「いつもお世話になっております」を嫌う人々
しかし、この「いつもお世話になっております」を極端に嫌う人がいることも事実です。
大学院生の頃、初めて指導教授にメールを送った際、私はサラリーマンの癖が残っていたためか、「お世話になっております」と書いてしまいました。
その数日後、実際にその教授に会ったとき、
「マリベルさんは、気持ちのこもっていない商業文を平気で使う人なのですね」
と面と向かって言われてしまいました。
大ショックでした。
そんなつもりではなかったのですが、受け取る人によってはそう感じてしまうものなのかと反省しました。
…いや、「そんなつもりではなかった」というのはウソかもしれません。
私は「とりあえず、そう書いておけばいっか」と思っていたのでした。
教授に見透かされました。
それ以来、その教授にメールをするときには、「こんにちは」「ご無沙汰しておりますが、お元気でいらっしゃいますか」などと書くようにしています。
「いつもお世話になっております」の効用
とはいえ、アカデミックな世界の人でも「いつもお世話に…」を使う人も存在します。
私はこれまでに、何通もそういったメールを受け取りました。
きまって、日常的に関わっているわけではなく、年に数回顔を合わせたり、メールのやりとりをする間柄の人です。
「気持ちがこもっていない表現であることは確かだが、だからこそ、一定の距離のある人付き合いにおいては使い勝手がいいんだよな」
そう感じています。
夫にこの話をしてみたところ、次のような反応が返ってきました。
- 確かに「いつもお世話に…」を毛嫌いする人はいる。だからそういう人にメールするときには書かないように気をつけている。
- でも、「いつもお世話に…」を毛嫌いする人たちが送ってくるメールを開いた瞬間に思うのは、「なんだかぶっきらぼうで怖い」ということ。
- 自分は人に「ぶっきらぼうで怖い」印象を与えたくないから、基本的には「いつもお世話に…」と書くようにしている。
確かに、いきなり用件から入るメールは、良くいえば合理的、悪くいえば「ぶっきらぼう」ですよね。
あまりにも愛想のないぶっきらぼうなイメージを与えるのは、何をするにしても得策ではありません。
特に関係が近くない人へのメールほど、この点は気をつけたほうがよいと思われます。
まとめると:
- 「いつもお世話に…」は、形式だけの、気持ちがこもっていない表現ではある。
- よって、毛嫌いする人もいる。
- かといって、あまり親しくない関係の人にメールをする際に、いきなり用件から入ると、ぶっきらぼうで怖い印象を与えかねない。
- よって、近しい関係にない人へのメールには、非常に使える表現である。
上に書いたように、「近しい関係にない人」には便利な表現ですが、日常的にお世話になっている人には使わない方がよいでしょう。
前述した教授の例では、「日常的に関わることになる関係」だったからこそ、その教授は「いつもお世話に…」に不快感を示したのだと思われます。
挨拶の言葉選び
以上、「お疲れ様です」と「いつもお世話になっております」という表現についてみてきました。
両者とも、使う相手さえ間違えなければ、人間関係を円滑にする便利な表現だといえます。
テレビなどでよく話題になるのは、「ご苦労様」の使い方ですよね。
これは、目上の人が目下の人に対して使う表現です。
私の母は、よく宅急便のお兄さんに使っていました。
他にも「お世話様」とも言っていたと記憶しています。
私はいまだにこの「ご苦労様」を使うことに苦手意識をもっています(「お世話様」はそもそも私の語彙リストにない)。
やっぱり、上から目線な表現だよなーと思ってしまうからです。
なので、宅急便のお兄さんにはいつも「ありがとうございます」と言っています。
やはり「ありがとう」は最強です。
言われてイヤな人はまずいないと思うからです。
対面の挨拶言葉で迷ったら、①相手の立場になって、そう言われたらイヤでないかを考える、②何かサービスを受けたのであれば、「ありがとうございます(ました)」を使う。
これで、たいていの場面はうまく乗り切れるはずです。
たかが挨拶、されど挨拶。
奥が深い問題ですね。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
また次回、ここでお会いしましょう。
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