京都歩きと開運メモ

~50歳からの毎日を楽しむ~

朝井リョウ『正欲』~凄まじいレベルの読み応え~

私は作家、朝井リョウ氏のファンです。

 

佐藤健主演で映画化もされた『何者』がきっかけです。

 

 
 
先日、書店でたまたま目に入った朝井氏の最新刊『正欲』。
 
書評のたぐいはいっさい確認することなく、一冊手に取りすぐにレジに並びました。
 
前提情報ゼロで読み始めた、この『正欲』。
 
単行本で約380頁と、なかなかのボリューム。
 
これを4日かけて読了しました!
 
今日はできる限りネタバレなしで、この本をご紹介したいと思います。

 

朝井リョウ『正欲』のテーマ

本を読んで感じることは、人それぞれ異なります。
 
ですので、以下に書くことは、あくまでも私が感じたことです。
 
 
この本のテーマは
  • 多様性
  • 正義
  • 想像力
  • 繋がり
  • マジョリティとマイノリティ
 
このあたりにあると感じました。
 
「多様性」という言葉で真っ先に思いつくのが、同性間での恋愛や、性同一性障害などだと思います。
 
一般的には、異性間で恋愛をして結婚をするのがマジョリティで、上に挙げた人たちはマイノリティに属すると認識されています。
 
しかし、朝井さんは問題を提起するのです。
 
ここでいうマイノリティとは、あくまでもマジョリティの想像力が及ぶ範囲のものに他ならないのだと。
 
つまり、世の中には、「上に挙げた世間的にマイノリティだと認められている人たちは、自分たちからしたらマイノリティとはいわない」と感じる人たちが存在するということ。
 
マジョリティからしたら、「え、そんなことに興奮するの?!」と我が耳を疑ってしまうような「事物」を性的対象として捉えている人がいるということです。
 
わかりやすく説明するために、この本では何が性的対象として捉えられているかをお話したいと思います。
 
この小説では、「水」に興奮する人々が登場します。
 
人間にはまったく性的魅力を感じることはなく、蛇口から勢いよく吹き出す「水」や、蛇口を手でおさえることで、自在にその形を変えることのできる「水」に性的興奮を覚えるのです。
 
彼らは、世間一般にいわれる「マイノリティ」にも含まれていない自分の性癖に苦しみ続けます。
 
自分の性癖を誰にも知られたくない。その思いが、彼らを他者との交流から遠ざけ、孤独にしていくのです。
 
一般社会は、群れから逃れ、ひとりでいようとする者に好奇の目を向け、標的にします。
 
自分の正体がばれないよう、彼らはさらに見を縮ませて、生きたくもない明日を今日も生きるのです。
 
 

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朝井リョウ『正欲』を読んで

「水」に性的興奮を覚える人々に、正直とても驚きました。
 
それと同時に思ったのは、「自分は本当になにも知らないんだ」ということでした。
 
たとえば、クリスマスシーズンから年末年始にかけてのイオンモールは、異性間での性的関係を基礎に成り立った「家族」でいっぱいです。
 
私はそんなイオンモールを当たり前のように歩いていました。
 
ですが、「水」を性的対象とする彼らは、このシーズンのイオンモールを、まるで別の星のように感じるわけです。
 
朝井リョウさんがこのような小説を書かれたということは、実際にマジョリティーの想像力では到底たどりつくことのない性癖をもつ人がたくさんいるということでしょう。
 
そういう人たちが抱える地獄のような孤独。
 
脳天気な私は考えたこともありませんでした。
 
かといって、そういう人たちに「なんとかしてあげなきゃ!」のような押し付けがましい思いは抱けません。
 
ただできることは、「そういうこともあるのかもしれないな」と脳だけは柔らかくしておきたいということです。
 
そして、これまでも私は他人の領域にズカズカと踏み込むようなことはしてきませんでしたが(自分がされたらイヤなので)、このスタンスはこれからも守っていこうと気持ちを新たにしました。
 
朝井さんのおかげで、世界を見る目が少し変わった気がしています。
 
なにかと「多様性」が叫ばれる今日このごろですが、本当はそんなに気軽に口にしてはならない言葉なのかもしれません
 
最後に少しだけ、小説の言葉を引用したいと思います。
 
「水」に性的興奮を覚える青年が、(その事実を知らずに)彼をゲイだと思い、心を開いてほしいと迫る女性に投げるセリフです。
 
「自分が想像できる”多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな。お前らが大好きな”多様性”って、使えばそれっぽくなる魔法の言葉じゃねえんだよ。自分にはわからない、想像もできないようなことがこの世界にはいっぱいある。そう思い知らされる言葉のはずだろ。多様性って言いながら一つの方向に俺らを導こうとするなよ」
 
この小説には、他にも男性恐怖症の女子大生や、不登校の小学男児をもつ親などが登場します。
 
その小学男児が夢中になって配信することになるYoutubeについても、たくさん学ぶことがありました。
 
朝井リョウ氏の文章はとても読みやすいうえに、何と言っても比喩表現がユニークで面白いんです。
 
私は今回もどんな比喩があるかな?と楽しみながら読み進めました。
 
テーマは重いですが、非常に考えさせられる内容ですし、なんといっても自分がいかに無知であるかを思い知らされます。
 
凄まじいレベルの読み応えのある小説です。
 
あ、性癖についての話であることは確かですが、不快感はほぼありません。
 
HSP(繊細な気質をもって生まれた人)の私でも大丈夫でした。
 
これはひとえに朝井リョウさんの筆力のなせる技でしょう。
 
気になった方はぜひ読んでみてください。
 
 

 

今日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!

 

皆さん、良い一日をお過ごしくださいね😊

 

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