京都歩きと開運メモ

~50歳からの毎日を楽しむ~

『彼女は頭が悪いから』感想~白馬の王子様が実は◯◯だったら~

先日、書店に立ち寄った際にふと目に入ったこの本。

 

『彼女は頭が悪いから』というタイトルに衝撃を受け、購入してみました。

 

読み終えた後、この作品が数年前に東大生協のベストセラーとなったこと、そして上野千鶴子東大名誉教授が入学式の祝辞で言及されたということを思い出しました。

 

このことはニュースで知っていたはずなのに、すっかり忘れていたのでした。

 

自分の忘却力にはほとほと呆れてしまいます。

 

というわけで、今日はこの『彼女は頭が悪いから』を決定的なネタバレなしでご紹介していきたいと思います。

 

『彼女は頭が悪いから』(姫野カオルコ著)の特徴

この本の特徴を私なりに3点挙げてみます。

 

  1. 実際の事件を元にしたフィクションであること。
  2. テーマがはっきりしていること。
  3. 作品中の東大生たちを「悪者」と決めつけていないこと。

 

以下、順に解説していきますね。

 

実際の事件を元にしたフィクションであること

2016年、5人の東大生がひとりの女子学生に強制わいせつ行為をはたらいたとして逮捕されました。

 

著者の姫野カオルコさんは、この事件を元に、フィクションを書き上げました。

 

姫野さんは、文庫版あとがきで次のように述べています。

 

本作は、いやな気分といやな感情を探る創作小説です。

 

「いやな気分といやな感情」

 

確かにそうだと感じました。

 

私たち人間が逃れることのできない「いやな気分といやな感情」です。

 

作品中の東大生たちに対して「こいつら、いやだな」と感じるだけならばよいのですが、「自分は他人に対して、この東大生たちと同じような感情をいだいたことがないと天に誓えるか?」と聞かれたら、思わず目を背けたくなってしまう

 

そういう意味でも「いやな気分といやな感情」を味わうことになる作品なのです。

 

テーマがはっきりしていること

この小説のテーマは、ずばり「過度の誇りから生じる、他者を見下す心や差別」です。

 

「学歴差別」が最も顕著に描かれていますが、学歴に著しい差をもたらす原因として挙げられるのは、「家柄」や「財力」ですよね。

 

やはり、幼い頃から英才教育を受けている子女は、学歴の面で圧倒的に有利といえるからです。

 

つまり、学歴のみにとどまらない「身分差別」とでもいえるような、社会全般に見られる「差別」をこの小説は扱っているわけです。

 

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作品中の東大生たちを「悪者」と決めつけていないこと

この小説は、冒頭で述べたように、東大生が起こした実際の事件をもとに創られました。

 

それだけ聞くと、著者は作品中、事件の当事者である東大生5人を非難し、「悪者」として扱っているのではないかとも思われます。

 

しかし、姫野カオルコさんは登場人物を一切断罪していません。

 

東大生たちが、なぜこのような事件を起こしたのか。

 

それは東大生Aが「悪人だから」、もしくは「人格破綻者だから」ではありません。

 

著者は、Aの家庭環境や友人付き合いを非常に具体的に描写しています。

 

読んでいるうちに「こういう環境で過ごしていたら、Aのような思考回路にならないとは言い切れないな」と、われわれ読者は自然と思うようになるのです。

 

そう思えるからこそ、この作品は「差別」という根深い社会問題についてわたしたちひとりひとりが考えるきっかけを与えてくれるのでしょう。

 

そこが、姫野カオルコさんのすごいところだと感じました。

 

『彼女は頭が悪いから』感想

私はこの作品を読んでいるあいだ中ずっと、被害者の女子学生(B子)を応援していました。

 

素直に「いい子だな」と思える子なのです。

 

善良な家庭に育ち、仲の良い家族の間で幸せに生きてきた、ごくふつうの少女。

 

B子は幼い頃から、なんとなく自分は容姿的にも家庭環境的にも「多くを望めない」と感じ、いろんなことを自然と諦めてきました。

 

それでも、年頃の女の子らしく、<白馬の王子様>に憧れたりもします。

 

 

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でも、もし<白馬の王子様>だと思った相手が超がつく優等生で、そのうえ「偏差値が低い大学に通う人間を心の底からバカにしている人間」だったとしたら…?

 

作品中、次のような一節があります。

東大生Aは、ホテルに直行する腹積もりでB子を呼び出します。

B子は恋焦がれているAに呼ばれて大喜び。

しかし、大急ぎで向かったとしても、Aの指定する時刻には間に合いそうにありません。

B子はその旨をAに伝えます。

 

すると、Aは思うのです。

 

東大のおれが会おうって言ってるのに、水大が何をもったいぶってるんだよ。

(水大とはB子が通っている大学のこと)

 

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これは、小説の中だけの話ではありません。

誰の身にも起こりうることです。

 

そして冒頭でも書きましたが、読者自身が他者に対してこの東大生Aのような気持ちをいだくことがないと誓えるのか?という疑問を、この作品は私たちに投げかけてくるのです。

 

ストーリー展開は興味を惹かれるもので、グイグイ読みすすめることができますが、終始「心が痛い」と感じながら話を追うことになります。

 

おわりに

作家の林真理子さんはこの作品ついて、「平成における最も重要な本のうちの一冊だ」と語っています。

 

平成は終わってしまいましたが、令和においてはなおさら重要度が増すのではないかと感じます。

 

なぜなら、事件がテレビで取り上げられるようになるやいなや、B子はネット上で激しいバッシングに遭うことになるからです。

 

東大生Aたちではなく、B子が、です。

 

【どうせ東大生狙いだったくせに。なに被害者ヅラしてるんだ】

【勘違い女。尻軽の◯◯◯◯◯】

【前途ある東大生より、バカ大学のおまえが逮捕されたほうが日本に有益】

 (あまりにひどい罵り言葉であったため、◯◯にしました)

 

 

先程私は読みながら終始心が痛かったと書きました。

 

しかし、それと同時に読んでよかったと心から思いました。

 

自身を振り返ると共に、あらためて他者との関わり方を考えさせられる一冊です。

 

 

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最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

 

皆さん、良い一日をお過ごしくださいね😊

 

 

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