朝井リョウ『武道館』感想~正しい選択なんてない?
旅先で、あなたはふと目についたレストランに入ることにしました。
食べログなどにも載っていないお店です。
メニューを見て、あなたはハンバーグを選びました。
しかし、そのハンバーグはあまり美味しくありませんでした。
あなたは「しくったな」と思います。
それは言い換えれば、「正しい選択をしなかったな」ということですよね?
他のメニューにするか、あるいは他の店にすればよかったと思うわけです。
しかし、食べログなどにも載っていないお店でなにを注文するかを決める時には、何が「正しい選択」なのかなんてわかりません。
あとから振り返ると、「正しい選択だった」のか、そうでなかったのかがわかるだけです。
これはほんのちょっとした一例ですが、結局のところ人生って、「正しいと思ってする選択」を、あとから振り返ってみたときに「正しかった選択」にするための努力の繰り返しなんじゃないでしょうか。
先日私は、とあるレストランでジェノベーゼを食べました。そしたら味が薄かった。
そこで粉チーズをもってきてもらい、たっぷり振りかけてみました。
ジェノベーゼを「正しかった選択」にするために工夫したのです。
今日は、そんなお話です。
朝井リョウ『武道館』
以前にもお話しましたが、私は朝井リョウ氏のファンです。
朝井リョウ氏の『武道館』は、「武道館でいつかライブをする!」を合言葉に活動する、ある女性アイドルグループの物語です。
アイドルの話というと、舞台裏での嫌がらせや女同士の闘いが連想されるかもしれませんが、この小説に出てくるアイドルの子たちは、みなとても善良です。
中学・高校という最も多感な時期に「アイドル」という仕事に就いた少女たち。
ただ歌うことや踊ることが好きだったからアイドルになったのに、待っていたのは望んでもいない露出系の仕事や、ネット上の心無い悪口など。
彼女たちは悩みながらも、「武道館ライブ」という目標に向かって邁進します。
対価を払って選び取る
この小説のなかで特に印象に残っているのが、主人公の愛子がインターネットやYou Tubeなど、無料で情報やエンタメに触れることのできる媒体について考えるシーンです。
愛子は自分の仕事に役立てようと、毎晩、他の女性アイドルの動画をYou Tubeで観ては研究していました。
その話をメンバーにすると、オススメグループの動画を見せてと言われます。
そう言われた瞬間、実は自分にはこれといって一番好きなグループはないということに愛子は気付きます。
手を伸ばせばすべてのものに触れられるインターネットという小さくて大きな部屋の中で、アイドルの動画を観続けていた。こちらからは何も差し出さずに、合わないと思ったものはショックを受けるまでもなくすぐに投げ捨てて。そうしているうちに、すべてのものを同じくらい好きになり、きっと、すべてのものが同じくらい退屈になっていく。
「こちらからは何も差し出さず」というのは、お金を使わないという意味です。
愛子は、<無料の世界でだけ生活し、何も選び取らない生き方>に疑問をいだきます。
お金や時間、体力といった「限りあるもの」をどう使うか。
つまり、お金・時間・体力などの対価を支払って何を選び取るかが「その人らしさ」であり、自ら何かを選び取ることが人生にとって大事なことなんだと気付くのです。
正しい選択なんて、ない
何かを選び取るときに気になるのが、「自分の選択は正しいのか」ということですよね?
冒頭のハンバーグの例もそう。人はハズレを引きたくないと本能的に思っているはずです。
しかし、この作品はズバッと告げます。
「正しい選択など、ない」と。
あるのはただ、
「正しかった選択のみ」だと。
読んでいて思ったのは、
人は対価を支払って自ら何かを選び取り、それが「正しかった選択」になるように努力するしかないのかも。
ということでした。
もちろん、ときには「正しかった選択」にならないこともあるでしょう。
そのときには、また別のなにかを選び取り、今度こそ「正しかった選択」となるように、さらに努力するしかないのです。
それが人生なのかもしれない。
そんなふうに思いました。
自ら選び取ったものを、正しかった選択にするために
例えば、このブログ。
私は「はてなPRO」で「独自ドメイン」なのでお金がかかっています。
そして、莫大な時間と労力をかけて記事を書き続けています。
対価を支払って、「ブログ執筆」を選び取ったのです。
ブログを始めることが正しい選択なのかどうかなんて、もちろん知るよしもありませんでした。
この選択があとから振り返ってみたときに「正しかった」と思えるように、いま努力しているわけですね。
なにがどうなったら「正しかった」と思えるのかどうか。。。
おそらく私の場合は、読んでくださる方、反応してくださる方が増えることだと思います。
数年後、「正しかった」と思えなかったとしたら、そのときはまた別のなにかを選び取るだけです。
人生って、ある意味「バクチ」みたいなものですね。
だから面白いのかな?
朝井リョウ氏の本はいつも面白くて一気読みしてしまいます!
そのうえ、常に哲学的で考えさせられるんです。
今日ご紹介した『武道館』。
愛子は、アイドル活動の中でどんな葛藤をいだき、どんな選択をするのでしょうか。
恋愛スキャンダルのせいで丸坊主になったアイドルや、ストイックすぎるアイドルなどが登場し、「あ、これAKBのあの人のことね」ってなります😂
興味のある方はぜひ読んでみてくださいね。
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