映画『劇場』感想~君だけを信じて君だけを傷つけて~
ピース又吉直樹さんの小説『劇場』、読まれた方も多いかもしれませんね。
私はまだ読んでいないのですが、Amazon Primeで映画版を見つけたので軽い気持ちで観てみました。
そうしたら、これがとっても良かった!
皆さんにもぜひ観ていただきたくて、今日は映画『劇場』を決定的なネタバレはなしでお伝えしたいと思います。
映画『劇場』(2020)
キャスト
疫病のせいで公演が先延ばしになっていたらしいこの作品。
主役の永田を演じるのは、山崎賢人さん。
この作品を実際に観る前に、口コミにさーっと軽く目を通したのですが、山崎賢人さんのことをマイナスに評価している人が結構いました。
ですが、この作品の山崎さん、とってもとっても良かったですよ!
山崎さんといえば「イケメン俳優」のイメージが強かったのですが、ダメ男の役もリアリティたっぷりに演じることのできる俳優さんなんだと知り、驚きました。
そして、永田を献身的に支える恋人・紗希役の松岡茉優さん。
私、この女優さん、かなり好きなんです。
以前、『蜜蜂と遠雷』という映画を劇場に観に行ったのですが、声の出し方が好みだなぁと(『蜜蜂と遠雷』も現在Amazon Primeで観ることができます)。
お顔もふわっと柔らかくて、とっても可愛らしい。
演技力もハンパなくて、これからきっと売れるだろうなぁと思っている女優さんのひとりです。
映画『劇場』あらすじ
永田は中学時代の友人の影響で、演劇にのめりこむ。
やがてその友人と上京し、劇団「おろか」を立ち上げる。
脚本・演出を担当する永田だが、その独特な作風は酷評され、劇団員からも見放される始末。
不安に押しつぶされそうになる永田。
そんなある日、永田は女優を夢見て上京し、服飾系の大学に通っている紗希と出会う。
明るく素直で、ちょっと人と違う感性をもつ紗希に、永田はどんどん惹かれていく。
演劇にのめりこむ永田は金に困り、紗希の家に転がり込む。こうして二人の同棲生活が始まった。
紗希は永田の才能を信じて疑わず、献身的に支えようとする。
永田はそんな紗希に心の安らぎを感じていたのだが、それと同時に、複雑な感情をいだくことをとめることができないのであった。。。
映画『劇場』感想
ここからは、感想をまじえて書いていきたいと思います。
永田と沙希はデートしてもお金がなくて、結局、下北沢にある紗希のアパートに帰ってきてしまいます。
そんなとき、紗希は永田にこう言います。
「ここが一番安全な場所だよ」
私はこの紗希のセリフがとても好きでした。
永田は見知らぬ人と言葉を交わすことを恐れ、自分の殻に閉じこもるタイプ。
紗希と二人でいられるその部屋は、永田にとってシェルターのようなものだったのかもしれません。
紗希はとにかく永田に甘い。
永田が暴言を吐いても、「ごめんね、私の言い方がよくなかったね」と謝ります。
永田が他の女と遊んでいることに気付いていても、見て見ぬふりをします。
まるで母親のような紗希。
一方、永田はとにかく自分に自信がありません。
自分の作品が周囲から酷評されているのも知っています。
同世代の天才的な演劇人を見ると、自分が笑われているのではないかと感じます。
かといって、彼には演劇がすべてであり、他のことはできないししたくもない。
不安に押しつぶされそうになる自分を、なんとか社会に繋ぎ止めてくれているのは他ならない紗希なのです。
永田は紗希のことが好き。それは確か。
それなのに、永田はときどき無性に紗希に対して意地悪な気持ちになるのです。
本編中に、紗希が友人から譲ってもらった原付バイクに永田が乗るシーンがあります。
そのシーンが、最も心に残っています。
永田の紗希に対する「甘え」と「あなどり」、そして自身に対する「イラつき」「不安」が観るものにまっすぐに伝わってきます。
皆さんに、ぜひこのシーンを観ていただきたいです。
紗希はとにかく永田に気を遣っています。
たとえば、永田は沙希がクリントイーストウッドの映画をほめたら、イーストウッドに嫉妬して怒り出すような男です。
気を遣わざるをえないですよね?
しかし永田は紗希に気を遣われれば遣われるほど、自分がバカにされているような気がして、余計にイラつくのです。
プライドだけは高い永田。
そんな男、捨ててしまえばいいのに、紗希は永田を待ち続けます。
献身的にもほどがある。。。
それでも、私は紗希のことをバカだなぁとは思えません。
なぜなら、永田にはピュアな部分があるからです。
そもそも、ピュアでなかったら、演劇一筋で生きていくなんてできないと思いませんか?
大儲けできるというのであればともかく、ほぼほぼ稼げないといわれる街角演劇。
そこに一生を捧げようとしている永田は、ひねくれている難しいヤツだけれど、ひとすじピュアな部分をもっていると感じます。
紗希はそこに惹かれたのでしょうし、自分がなんとかしてそれを守ってあげたいと思ったのでしょう。
永田が紗希にキツく当たったり、紗希を遠ざけようとするたびに思いました。
二人の関係は、まさしく『TRUE LOVE』(藤井フミヤ)の世界観だなと。
君だけを信じて
君だけを傷つけて
おわりに
これ以上書くと、ネタバレしてしまいそうなのでやめておきます。
「ダメ男と献身的な女のラブストーリー」と単純化してしまうのはもったいないような気がするこの作品。
私はまだ原作を読んでいませんが、原作を読んだらまた永田に対する印象は変わるのでしょうかね。
映画の舞台は、小さな劇場がそこかしこに点在する若者の街、下北沢です。
私も学生時代によく遊びに行きました。
学生時代の友人が劇団に所属していて、舞台を一度だけ観に行ったことがあります。
舞台と客席が想像以上に近くて驚いたのを覚えています。
下北沢には、永田のような人間がたくさんいるそうです。
それだけクリエイティヴな世界で生きていくのは難しいということなのでしょうね。
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